❇︎❇︎❇︎❇︎ 断片小説25「あの夜・決壊」❇︎❇︎❇︎❇︎
「あなたなの?楓を、撃ったのは」
拘束し、問い詰めた若い警察官の、浅く速かった息づかいは、ヒュッとわずかな音とともに吸われたまま、止まった。そして、おそらく恐怖と緊張で、こわばっていた全身の力が、奇妙に抜けてゆく。百合は、ほんのわずかに腕の力を緩め、重ねて問うた。
「あなたなのでしょう?楓を、撃ったのは」
百合は待った。その、震え始めた唇から、出る言葉を。聞きたくなどないけれど、期待した答えを。
しかし、
「……当たってたんですね……」
漏れ出る息のように、虚ろな声が言った。
「やっぱり……僕が…撃った弾は、その子に…当たっていたんですね……」
百合は腕をほどき、警官の前に回った。妙にぎらついて、見開かれた目は、どこも見ておらず、細かく震える浅い呼吸に喘いでいた。
「知らないの?」
百合の問いかけに、もう彼は答えられそうもない様子をしている。
「そう」
と、百合は溜息に言った。
「知らないのね」
やはり、そういうことなのだ。この男を追求したところで、楓の「仇」に、辿りつききれるはずもなかった。それにしても、なんという段階で、事は秘されている。百合は、はあっと息をついて、土間の上がりはなに腰を下ろそうとした。そこへ、
「ゆりちゃん、どいて。あたしがやる」
部屋の奥に隠れていたはずのサツキが、ナイフを手にして飛び出してきた。
「だめよさっちゃん」
百合は、ナイフを握ったサツキの腕を取って制する。
「なんで!?こいつが楓を撃ったんでしょ!?」
「ええ、そうね」
「だったら!」
「でもだめよ」
「どうして!?依頼のない殺しはしないから!?」
「ええ、そうよ」
「でも許せない!だってこいつが楓を!」
「わかってる!でも!」
百合は珍しく、大きな声でサツキを制した。百合はサツキを睨むようにして、静かに言った。
「彼は知らないわ、なにも」
いつしか二人は、両腕を取り合っていた。百合は、サツキの腕を優しくひとさすりした。
「彼は、なにも知らない。それに、見て。こんな状態の彼を殺すことには、なんの意味もないわ。私たちが辿りつきたいところは、このずっと先にある」
百合は、じっとサツキの目を見る。サツキは、見開いた目に、涙をいっぱい溜めて、
「でも、こいつは、百合ちゃんの顔を見た」
と、消えそうに言った。
「こいつをここで殺さないと、百合ちゃんが危ないよ」
震える涙声のサツキに、百合は、ふっと笑ってみせた。
「大丈夫よ。私は大丈夫。だってほら、見て。こんな情けなく放心した彼に、何ができる?それに、彼がここで死んだほうが、私たちは危ない」
でも!と、なかば喚くように言ったとたん、サツキはぽろぽろと涙をこぼした。
「百合ちゃんは甘いよ!だって、何かあったらどうするの!?こいつのせいで、百合ちゃんに何かあったら!あたしは許さない!」
「大丈夫よさっちゃん、落ち着いて」
「落ち着いてなんかいられないよ!あたし嫌だよ!?それに、もしかしたら、おひさまだって、なくなっちゃうかもしれないんだよ!?」
サツキの叫びが、台所の冷たい闇に反響した。
百合は、少し沈黙した。そして微笑んで、首をかしげ、掬い上げるようにサツキの、涙に溺れた目を見上げて、
「そうだよ」
と、静かに言った。言ったとたんに、涙が溢れた。
どちらからともなく、サツキと百合は抱き合っていた。泣きながら、すがりついてくるサツキを、百合は抱きとめていた。
「そう、私たちは、終わるの。いいえ、ほんとうは、始まったときから、私たちは終わっていたのよ」
涙は、ただ、さらさらと流れた。いったい私は、いつから泣いていない。いや、こんなふうに涙を流したことなど、一度もない。
「ゆりちゃん……なんで……そんなこと言うの」
そこに怯えさえ見せて、腕の中で泣いているサツキは、かつての小さなさっちゃんだった。百合はサツキを、さらに引き寄せて抱いた。
「いいの?」
と、サツキの声が、微かに責める。
「ゆりちゃんは、それでいいの?おひさまが、なくなっちゃっても……」
その問いに答えることは、なんて難しい。
「さっちゃん」
ただ、呼ぶ。さっちゃん、と、数度。呼ぶほどに、愛おしく、ああ、美しかった、と思った。美しい幸せだったのだ、あの日々は、と。
「ごめんね」
広く深く吐く息のように言った言葉と、混ざるように涙は、とめどなく流れた。
「ごめんね、さっちゃん。私が悪い」
さらさらと流れる涙とともに、言うつもりのなかったことも、さらさらと溢れる。
「私がさっちゃんを、こんなところへ、連れてきてしまった」
言えずにいたのだ、と思った。
「ちがうよ」
と、サツキが小さく言う。
「ゆりちゃんがいなかったら、あたし……あたしのせいで、ゆりちゃんは……」
ああ、またさっちゃんは、自分を責めてしまうのだ、と思った。
私たちは、終わらなければならない。
「終わろう、さっちゃん」
口にして、結末の近さが、現実味を帯びた。
「いやだよ……いやだよゆりちゃぁん」
泣きじゃくるサツキの頭を、百合は柔らかく抱いた。
「大丈夫。大丈夫だよ、さっちゃん」
そしてその、丸めた背中を、優しくさする。もはや涙が流れ続けることが、心地よくさえあった。その感覚に身を任せたまま、百合はまた、穏やかに微笑んだ。
「ずっと、一緒にいるからね。みんなで、ずっと、一緒にいようね。そして、終わらせよう」
柔らかくサツキを抱きながら、ふと闇を見据えて、百合は静かに、しかし強く、呟いた。
「でも、それは、今じゃない」
サツキをそっと離し、その両肩に、掌を熱く置く。涙は嘘のように止まった。百合は決意を、微笑みに込めて言った。
「行こう」
リビングに続く階段のかげに身を潜めていた葵は、
「行こう」
と、百合が、いつものように、いや、いつもと違って強く微笑んで言ったとき、繋いだスマホを握り直した。声も出ず、ただただ流れ続けていた涙を、手のひらでぬぐった。スマホの向こうでは、きっとすーちゃんも泣いている。かすかにその気配を感じて、スマホを胸に抱く。
フジには内緒ね、と、百合さんが言ったから、身を隠したホテルで、フジをすみれが睡眠薬で寝かせた。
眠るフジの傍に、きっと静かに座って、すーちゃんは静かに泣いている。
百合は、サツキの手から取ったナイフで、警官の拘束を切った。そして、
「もうあなたに用はないわ」
と、冷たく言った。
「……どうして……」
と、警官が口を開く。
「どうして……殺してくれないんですか……」
震えた掠れ声で言う警官を、百合は黙ったまま横目で見る。
「殺せば、いいじゃないですか……ぼくが、あなたたちの大切な仲間を、殺したんですよ……?」
警官は、拘束を解かれても、だらりと座ったまま、放心して、涙なのかなんなのか、目だけは妙にぎらついて見開いて、百合を見上げた。百合が、ヒールの踵を鳴らして、警官に近づく。そして胸ぐらを掴むのだろう、と、葵は思った。しかし、触れず、真正面から顔だけを、目を、その1センチの距離に詰め、一言一言を噛み潰すように、おそろしく静かに、百合は言った。
「殺してなんかあげない。私たちの楓を、殺したのだということを、背負って生き続けなさいよ」
葵はまた、スマホをぎゅっと握る。
「行こう」
と、もう一度百合は行って、踵を鳴らして、土間を、外へ出ていった。
葵は、そっとリビングへ出て、座り込んでいるサツキの背中へ、そっと声をかける。
「サツキさん……」
するとサツキは、ばっと立ち上がって、警官のほうへ向かう。葵は、慌てて追った。
「出てってよ」
と、サツキは乱暴に警官を立たせた。
「出てって。ここは、あんたなんかがいていい場所じゃないの。出てって。はやく!出てよ!」
警官を追い立てるサツキと、追われるままにふらふらと外へ出る警官について、葵はおろおろと外へ出た。
振り返らずに去る百合とサツキを追い、しかし葵は、店が見えなくなる前に振り返る。青白い街灯の光にかすかに浮かび、勝手口の外に立ち尽くす警官の影。唇を噛んで背を向け、足早に歩き出すと、また、涙が溢れた。
]]>風太は、音を立てないように花屋の裏口のドアをあけ、暗い店内に入る。ひんやりとした土間は奥へ続き、その先に青白く、台所が薄ぼんやりと光っていた。風太は、一足一足慎重に、歩を進める。息が浅い。
暗い土間の路を抜け、台所へ出たところで、
「こんばんは」
左の耳元で、穏やかな女の声がした。
身が凍りついた。
ふわりと舞うように、白いショールを翻して女が後ろに回り込んだかと思うと、動く間もなく両手が後ろで拘束された。
「どうぞ、座って」
拘束した手を引かれ、台所の隅の椅子に座らされた。なぜ、体がこうも簡単に動かされてしまう。風太は、逃げなければ、と、思うものの、ただ呆然とした。
「ごめんなさいね。誘き寄せるような真似をして。」
背後から、穏やかに話す女の声。やられた、と思った。動くなよと、言ったコロバさんの顔が浮かぶ。
「あなたと、話がしたかったのよ。私が」
女は、風太の真後ろに立っていた。首筋が粟立つ。
「あの…あなたは…」
やっと発した言葉は、我ながら間抜けだった。
「そうね。あなたたちにわかりやすいように言うなら、ここのボス」
粟立つ風太の首筋に、女は背後から冷たい両の指を這わせた。女の左手が、吸い付くように喉元に回り、頭から背が、女の胸に押しつけられ、さらに身動きが取れなくなった。脂汗が滲んだ。
「見て」
女は、風太の目の前に右手をかざし、耳元に囁く。
「見て、この指輪の、中を」
「へ…?」
「見える?マリアの姿が」
女の小指の、暗い中にも光る小さな指輪には、緑色の偏光の中にマリア像が見えた。
「私の手が届くのなんて、ほんのわずかだけれど、私は女の子たちの、聖母でありたいと思っているの」
「そう、なんですね……」
間抜けに相槌を打つ。女の顔が、見えないのが怖い。穏やかなままなのに、その声は風太を責め始めていた。
「その、私が大切にしていた女の子の中にね、楓という子がいたの」
「い、た……?」
「そう」
女の右手がそのまま、風太の頬を這い、頭が腕に絡め取られて、やんわり首を絞めるように、さらに強く胸に押しつけられ、頭を固定される。
「いいこと教えてあげましょうか。このマリアの指輪からはね、毒の針が出るの」
「え……」
左耳の後ろに、小さな金属の感触がし、身がすくんだ。
「5年前よ」
「5年…前…?」
5年、という言葉が、胸をちくりとかすめてゆく。
「そう、5年前」
ひそめた女の声が、恐ろしく、低く、重く耳から入ってきた。
「5年前、私たちの楓は、警察官に撃たれて死んだ」
死、という言葉が、頭に刺さった。
「その警察官が誰なのかは、いまだにわからない。事件自体、無いものとされたわ。でも、楓の弟が、その警察官の姿を遠目から見ている。あなたの姿に似ていると言ってるわ」
女の冷たい唇が、かすかに、耳に触れた。
「あなたなの?楓を、撃ったのは」
耳鳴りを感じ、視界がわずかずつ、暗くなっていった。
勝手に動くなよ、と、コロバさんに言われたのは何度目か。そのたびに、はい、と、うつむいて小さく答えた。
じっとしてなどいられない。
風太は、一人で「花屋」を張った。
失敗を取り返すには、動くしかない。
そう、強く思っていた。
「花屋を張っても無駄だ。我々と接触した以上、向こうは警戒している。本拠地に戻ってくるほど、奴らは阿呆じゃない」
コロバさんは、俺の考えなど、お見通しなのかもしれない。それでも、奴らが阿呆じゃないとしても、手がかりは「そこ」しかないじゃないか。
花屋は、いつ行っても静まり返り、中にも人の気配はまったくしなかった。車もない。コロバさんの言う通り、無駄なのかもしれない。
自己満足だし、馬鹿なのはわかっていた。でも、そうせずにはいられなかったのだ。
道を挟み、花屋の表のシャッターと、裏へ通じる軽自動車が一台ギリギリ通る入り口が見える塀の陰に身をひそめ、まるでただ時間をやり過ごすような張り込み。何日、こうしているだろう。寒いほどの気候ではないのに、妙に身の内が震え、足元がずっと落ち着かなかった。
変化など、来ない気がしていた。古びた商店街は、いつも、穏やかに静まり返っていた。挽回したくて、何日もここに来てしまっている。一方で、何も起こらないでほしいと、思ってしまっている。認めたくない怯え。愚行だ、と、もう何度目かの自己嫌悪に陥ったそのとき、ふと、気配を感じた。
緊張して身を潜め直し、花屋のほうを伺う。人影があった。跳ねるように動く、小さな女が、きょろきょろと通りの人影の有無を伺うようにしている。あの女だ。港の倉庫で、銃を構えた風太に、おちょくるように近づいてきた、ふざけた若い女。風太の手元と、舌打ちになるかならないかに、口元に力がこもる。女は、よし、と聞こえてきそうに頷いて、また跳ねて、店の裏へ回っていった。ふざけている。見回しても、他に人影はない。風太は、女を追って、花屋の裏口へ向かった。今日は、銃はない。持っていたところで、どうせ撃てないのだ。逆に銃さえなければ、あんな小さな女に力で負けるわけがない。
裏口に、女が入ってゆくのが見えた。それ以降、花屋はまた静まり返る。アルミのドアのノブにそっと手をかけ、一瞬ためらい、そのあと、フッと短く息をついて、風太は、音を立てないようそっと、ノブを回した。
断片小説10「葵」
機嫌良くしていたら、母に叱られることは少なくはなった。明るく楽しそうに振る舞っていたら、学校の先生やおせっかいな大人たちにとやかく言われることも減る。関係のない大人に、口を挟まれると、母にはずいぶん酷い目に遭わされた。あっけらかんとして、軽口を叩き、何事もなさそうに見せてすり抜ける。それが、幼少期早々に身につけた技だった。
「葵!」
「わ!びっくりしたもうやめてよさつきさん〜」
「それ!また現場の近くでカフェ入ったでしょ!」
「でもテイクアウトにしたもん!だって咲かせた後はさぁ、こういうのが飲みたくなるんだって、今日もいっぱい血が出たからさぁ、ほらみてこれ、季節限定ブラックベリーのラテにホイップ増し増しでチョコレート追加」
「だから!そういうアブナいことはやめなさいって!」
だからテイクアウトにしたじゃん、と、指についたホイップを舐める。ふりかかっていた細かな赤い乾燥ベリーの甘酸っぱさが、かすかに血の匂いを思い起こさせ、ひそかに興奮する。
「そういう危ないもだけど、その、感覚?やめな。戻れなくなるよ」
サツキさんは、悲しげな顔をして言った。戻れなくてもいいもん、と、心の中で呟く。今のあたしは幸せだから、と。
「ゆりちゃんが見たら、怒るよ」
「……それはやだ……」
百合さんに叱られるのは、つらい。ごめんなさいって思う。幼少期には、感じたことのない、清らかなごめんなさいは、葵を心地よく責めた。
「葵、ごめんね」
と、百合さんは言う。
「私があなたに、教えてしまったのよ、いけないことをたくさん」
ちがうよ、と、心の中で言う。百合さんに拾ってもらわなかったら、どんな死に方をしてただろうって怖くなる。きっと自分のこと、大嫌いになって死んでた。
「ちがうよ。葵が自分で開花させたのよ。ヤバい感性を!」
と、すーちゃんが意地悪げに言って、
「それはそう」
と、さつきさんが笑う。
「やばくないもん!え?みんな興奮しないの?おかしくない?」
おかしくない!あんたがおかしい!と、みんな和やかに笑ってくれる。あの頃の自分と、変わらずこんなかんじだけど、あの頃の自分より、今の自分は百万倍幸せで好き。
母は、男に依存しないと生きていけない女で、お金を稼ぐ能力も、福祉に頼る知恵もなくて、それなりに男を引き寄せる「女」を持ってはいるものの、男を繋ぎ止めてはおけない、男が逃げたくなるような「面倒な女」だった。取っ替え引っ替え連れ込む男はたいてい、ろくな人間じゃなかった。不満を言ったり、泣いたり、落ち込んだりすると、母にはヒステリックに怒鳴られ、男には殴られた。しみったれた顔をするんじゃないよ、気に障るガキだね、と。
中学生になったら、金を稼いで来いと言われた。パパ活、という方法に辿り着いた。それなりに、楽しく稼いだ。機嫌良く可愛くしていたら、オジサンたちはお金をくれて、ごはんを食べさせてくれて、プレゼントをくれて、それをお金に変えて持ち帰ると、母は喜んだ。いい子だね、と褒められた。そして、あたしに似て、それなりにいい女なんだから、と、上機嫌になった。
ちょろい、と思った。世の中の男たち、ちょろい。だから調子に乗った。オジサンが目を離している隙に、財布から金を抜くようになった。そのあと会わなけりゃいい。やらしいオジサンは、いくらでもいる。ある程度可愛がってもらって、もらうもんもらって、金をくすねたら、ぽい。あたしがオヤジたちを食い物にしてる。ちょろい。そう思っていた。
ところが、どこでなにをどう失敗したんだか、「報復」に遭った。大人を舐めるのもいいかげんにしろ、と、男たちは怒っていた。
「なんだよ!さんざんあたしでいい思いしたんじゃないのかよ!調子に乗んな!」
調子に乗んなはこっちの台詞だと言われた。路上で、男たちに囲まれ、ゴミまみれに、乱暴された。暴れても、小さな体では敵わなかった。
「なんだよオバサン」
と、男たちが、止まった。
「なに見てんだよ」
汚い路地裏に、白い服の百合さんが立っている光景は、鮮烈だった。
「なにをしているのかなと思って」
教育だよ、と男たちは言った。悪いことをしているガキを教育してるだけだと。
「そうね。悪い子ね。だったら警察に突き出して、お任せしたらどうかしら?未成年買春と暴行で、叱られるのはあなたたちのほうだと思うけど」
ゆりさんは、微笑んで歩み寄る。
「私が引き取るわ。あなたたちのような男性に、これ以上迷惑をかけないように、私がちゃんと教えるから。ここはおさめない?」
男たちが去ったあと、ゆりさんはショールを貸してくれて、ゴミの中から立ち上がれないままいたら、そこに一緒に座り込んでくれて、そうして長いこと、百合さんと話した。今までのこととか、自分のこととか、泣いたり怒ったり調子に乗ったりしながら、いっぱい話して、ぜんぶ百合さんは聞いてくれた。買ってくれた温かい缶ココアが、信じられないほど美味しかった。
最後に、百合さんは言った。
「あなたが悪いわよ。あなたが悪い。男性の中には、とても悲しい性質をした人たちがいるけれど、それでも男の人を、尊敬しなくてはだめ。こちらが尊敬していないと、私たち女も、尊敬してはもらえないのよ」
叱られた、と思った。これが叱られるということだ、と思った。
私と来る?と、百合さんは言った。あなたには、時間をかけて教えたくなってしまったのだけど、いろいろ、と。それでそのとき、のこのこついて行って、本当によかった。百合さんがくれた、葵、という名前で、新しく人生が始まった。
「ほら葵!」
ホイップクリームを崩しながら、気不味くいたずらにラテを混ぜていると、サツキさんが言った。
「ゆりちゃんに見つからないうちに、早く飲んじゃいな!」
そして、
「そんなに赤いものが欲しいんなら、今夜はキムチ鍋にしてあげよう」
と、おどけた口調で言った。
「え、なにそれ最高なんですけど」
あはは、と笑ってからサツキさんは、
「でも、葵が泣いちゃうくらい、めちゃくちゃ辛くする」
と言った。
「ええ〜!やだぁ〜!」
なに騒いでるの?と、すーちゃんが降りてくる。
「すーちゃん!サツキさんがキムチ鍋、泣いちゃうくらい辛くするってゆった!」
「え、あたしは別に辛くてもいい」
やだぁ〜みんな意地悪〜!と騒いでいるところへ、勝手口から入ってきていたフジが、卵につけて食べりゃいいじゃん、とボソッと言って、ただいまぁ、と百合さんの声が聞こえて、急いで飲み干そうとしたラテにむせて、涙を流しながら笑った。
今の私は、とても幸せだ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 断片小説9「すみれ」 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
数回目の、大教室での授業の終わり、彼に声をかけられた。
「突然声かけてごめん。ノート、コピーさせてもらえませんか?」
おとなしい茶色に染めた髪。さらっとアウトドアメーカーの薄手のウインドブレーカーを羽織っていて、恥ずかしげに笑う様子に、うっかりきゅんとした。
「いつもここ座ってるよね。偉いなって思って、いつも見てたんだ。こんな前で真面目に話聞いて、ノート取っててさ。俺、いつもいつのまにか寝ちゃってて、ノート真っ白だから」
照れて頭をさする手が、大きくて、
「あの、ノート借りちゃうの悪いんで、今からコピー行くの、付き合ってもらっていい?突然ついでで悪いんだけど、昼メシ、おごるんで、お礼に、食べに行かない?学食じゃなくて、駅前のどこかとか」
一生懸命誘ってくれる様子にどきどきして、ハイ、では、遠慮なく、と、あまり可愛いとは思えない返答をしていた。それでも彼は、
「よかったぁ!」
と言って、ぱっと笑った。陽が差したようだと思った。
次の授業、彼は少しだけ前の方に、少しだけ近くに座ってくれた。ああ、こんな前には座りにくいよな、と、その次からは自分が、少し後ろに座ってみた。それ以来、隣同士で授業を受けた。居眠りをする彼を、ペンの背でそっとつついて起こしては、照れ笑いする寝起きの顔にときめいた。
連絡先を交換して、他愛ないメッセージを送り合った。一緒に図書館や、カフェテリアへ行った。空き時間に公園に行ったり、休みの日に映画へ行ったりもした。
キスを、されそうになったとき、ぱっと身を引いてしまうと、彼は、優しく肩に手を置いたまま、微笑んで言った。
「ごめんね。大丈夫。嫌だったら、何もしない。君の心の準備が整うまで、何もしないよ」
少しだけ、残念に思いながら、彼のそういう優しいところに、涙が滲んだ。
誕生日、一緒に過ごす初めての誕生日にって、彼と相談をして、約束した。
「素敵な部屋を取るね。ラブホテルなんかじゃなくさ」
そんな、高いでしょう?と言うと、
「大事な誕生日だから、素敵な記念日にしたいじゃん。そこは無理させてよ」
そして、おでこにだったらキスしていい?と、言ってから返事は待たずに、彼は短く軽くおでこにキスをした。顔が、馬鹿みたいに熱くなった。
誕生日。誕生日までに、お化粧を練習した。服を迷って何着も買った。誕生日。準備ができているのかできていないのかわからない心をそわつかせて、精一杯のおめかしをして、彼に伝えられたホテルのスイートルームへ行くと、そこには彼と、数人の彼の友達が待っていた。
「ハイ、落ちた〜」
「まじ気付かないのすげぇわ」
「ガチ処女やべぇ〜」
彼の座る前のテーブルに、友人たちが次々に一万円札を置いてゆく。
「俺が天才なんだよ」
男たちが、今月さすがに続くとキツいわ、と、重ねていった札を、彼は無造作に財布にしまった。なにこれ、どういうこと?と、血の気が引く中、なんとか発した声が、頭の中のおかしなところで響く。
「アイツね、処女見極めて、落とす天才。で、俺らが賭けてるので、今から君をいただきまーす」
えっ、と、声を上げる間に、ベッドに引き倒され、数人に自由を奪われる。
「大丈夫だよ〜。素敵な誕生日にしてあげるからね〜」
「そうそう、おとなしくしてたらイイキモチになれるから〜」
やめて、ねえ、助けて、と、男たちの隙間から彼に助けを求める。が、彼は、こちらを見ようともしない。
「なにこれ!ねえ!なにこれ!助けて!ねえ助けて!」
必死に彼に訴え、彼の名を必死で呼ぶと、彼は、見たことのない冷たい目を上げてこちらを見て、
「その呼び方やめてくれる?キモい」
とだけ言い、また冷たく外した。そして退屈そうに携帯をいじり始めた。
血の気が引き、耳鳴りがした。
ふたたび、男たちの手を感じる。
お願い、やめて、離して、やだ、助けて、誰か、誰か助けて……
どんな声が出ているかもわからないほど必死で叫んだ。力の限り抵抗しても、全く無力だった。力を出せば出すほど、絶望が深くなってゆく。
怖くて、痛くて、情けなくて、結局は自分が馬鹿で、浮かれていた自分が恥ずかしくて、痛くて、気持ち悪くて、自分の涙さえも汚くて、気持ち悪くて、どんどん抵抗する気力を失って、果てに、自覚できる体は、ぼろぼろの、何か汚い、ただの“モノ”になった。
「いつまでいんの?」
荷物と服を投げつけられた。
「暗いうちに消えてくんね?」
力を振り絞って身支度をした。こっちにこそ矜持、こんなところには1秒だっていたくない、と。こっちを見もしない彼と、にやついて浅はかに騒ぐ“友人“たちに、冷たく視線を外して、できる限り背筋を伸ばして、つんと顎を上げて、部屋を出た。重い扉がゆっくり閉まるのを感じるまで、顔を上げて廊下を歩いた。背後で閉まる扉の音を聞いたとき、込み上げた涙を飲み込んだ。ホテルを出て、しばらく歩いたところで、身体中の痛みが急に強く返ってきた。
なにこれ。犯罪だよね。訴える?被害届?しだいに足を引きずって、体もひきずるようにして、でも前には歩いた。被害届を出して、話すのか、ことの顛末を。恥ずかしい、浮かれていた私を。その挙句に、されたことを。
唇を噛む。口の中が、喉の奥が、苦い味がした。こんな恥ずかしくて汚れた私、もう誰にも会えない、と思った。ふらふらと、車道のほうへ足が向いた。歩道と区切る縁石を、乗り越えるために足を上げる力さえ、なかった。けれど、転げ出てしまえば、と思って、
「だめよ」
誰かが、サラッと腕に触れ、優しく掴んだ。
「ホテルのロビーで見かけて、追いかけてきて正解」
エプロン姿の女の人だった。
「だれ、ですか…」
「ホテルのロビーのお花を受けている花屋よ。今夜、仕事があってよかった」
その人は、そう言って微笑んだ。
涙が、枯れたと思っていた涙が、再び滲んだ。
「もう…だってあたし…もう…」
込み上げてくる感情に、唇が歪む。涙が溢れ出す前に、その人は優しく抱きしめてくれた。その人の、肩から胸に流れるショールに埋もれて、泣いた。ショールは柔らかくて、あたたかくて、いい匂いがした。
「人生、どうせ捨てるなら、前向きに捨てなさい。外に出たくなるまで、出なければいいわ。そうすれば、生きていられるのなら、私が手伝う」
そのまま、その人のところに、その人に連れられて帰った家とそこの人たちに、匿われるようにして、新たな日々が始まった。前向きに、人生を捨てて、その人がくれた「すみれ」という名で、新しく始めた。
「百合さん」が用意してくれた「穴ぐら」は、あたたかくて、心地がよい。
]]>オープニングと題しました。
ドロチームは、じゅんちゃん、ぴろ、あいこ、やとぅ…
はじめはケイ・ドロどちらにも属してトップの「存在」を二役中立で演るつもりでいた私も、
なにそれヤバイ!私もガチで演りたい!と、
警察のトップをP様にほっつけて、ガチで入りました笑
私たちはいったいどんな「悪者」なのだろう、と、話し合って、初日に大盛り上がりした「設定」を文章化したもの、
女ばかりの暗殺集団です。
そこに入る一人の若い男は何者?(それはまた後の話)
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「オープニング」
男を満たし、シャワーを浴びさせ、再びベッドに誘い寝かし、その傍らに寄り添って瞼にキスをし、男がその幸福のさなかに酔ううちに百合は、男の心臓に正確に、アイスピックを突き立てる。絶命までの十数秒がわずかに苦しいことに、百合は耳元で甘く詫びる。その苦しみで無様に体が乱れぬよう、愛を込めて抱く。血は、わずかにしか出ない。百合の残す現場はいつも美しかった。男の遺体にしばし寄り添い、身支度を整え、カーテンをわずかに開けて、明るみはじめようとする空を見ながらコーヒーを飲むと、「清掃」の者に電話をかける。
「終わりました。お願いします」
サツキの仕事ぶりに、男たちは、女としてではなく惚れ込んだ。色気を振り撒いてくるでなく、優秀で、さばさばと軽口を叩ける、しかし男同士ではない同僚。サポートされた仕事は、信じられないほど上手く進み、男としてのプライドは満たされた。この優秀な女にサポートされる魅力が自分にはあるのだと、彼らは勘違いした。彼らが、本来話すべきでない込み入った内容までサツキに共有してしまうまで、長くはかからない。サツキを「手に入れた」ことを誇る男たちは、同僚を出し抜くため内密にそれを行い、いつのまにか不審死を遂げ、漏れるべきではない機密が漏れ、その男が入れ込んでいた「同僚」は、姿を消している。
男たちは皆、すみれを崇めた。触れようとすると静かに、
「触らないで」
と発するその声も、冷たい眼差しも態度も、彼らは崇めた。ただ食事をしてくれる。隣を歩いてくれる。二人きりになった部屋で足元に跪くことを許してくれる。手さえ握ることを許されない女神に、男たちは夢中になった。
「記念日にしましょう」
と、告げられた日に、用意した美しいスイートルームの部屋で、初めてこの不可侵の女神を抱きしめることが許される。万感の思いで抱きしめると、しなやかに男の頸に腕を回したすみれは、自分の背後、男のその鼻先に、美しい香水瓶で、毒のミストをひと吹きした。途方もない幸福と達成感の中、男は花の香りを吸って、静かに息絶える。足元に崩れ落ちた男を冷たい目で見下ろし、
「穢らわしい」
と呟くと、すみれはその部屋でシャワーを浴びた。そして、髪の毛一本残さぬようバスルームを掃除して、静かにその部屋を後にするのだ。
葵との明るく幸福な日々は、男たちの最後の思い出にふさわしかった。健康的に甘く楽しい恋人のとき。葵は、いつも男たちを全力で愛した。葵と「付き合う」ことで、男たちは活き活きし、表情は華やいだ。そして、最期の瞬間、彼らが見るのは、葵の笑顔だった。葵は必ず、楽しいデートの最中に「仕事」をした。あるときは事故を装い、あるときは自殺を装い。それはあまりに意外で、唐突で、最期に見る彼女の笑顔があまりに可愛くて、自分が死んだことにも、気づけないかもしれなかった。絶命した恋人に、
「ばいばい」
と軽やかに言って、香水を振りかけ、ステップでも踏まんばかりに、葵は現場をあとにする。
彼女たちが帰ってゆく「家」は、「フラワーショップおひさま」という看板を掲げていた。
]]>情報発信のほとんどがTwitterになっているCブレンドです。
さて、ブログではお知らせさえしていませんでしたが、
9月末から始動した企画『ガチケイドロ』
没入エチュードワークショップと銘打ち、
相原千景流役作りのメソッドを体験するプログラムをやっておりました。
子供の頃に遊んだ、警察と泥棒に分かれて鬼ごっこをする「ケイドロ」を、
ガチで作り込んだ設定とキャラクターで、エチュードしながらやってみよう!
という手法です。
ゲームをやることより、
「ゲームがやれる状態」まで、
自分自身のキャラクター、
共演者との関係性、
コミュニティの設定などを、
「作り込む」ことが最重要。
それぞれのグループで、アイデアを出しながら、自分たちをゼロから作ってゆく。
盛り上がりました。
おもしろいと思って始めたけど、
想像以上におもしろかった。
ハマりました。
そして、ゲームをやった日、
「このまま終わりたくない!」
「彼らの……私たちの終わりを見届けたい!」
という声が役者たちから上がり、
もはやゲームは忘れてしまおうと。
エチュードを繰り返しながら、キャラクターを「生きて」ゆく、
そして「作って」ゆく、
先日、「終わらせ」ました。
その、エチュードを繰り返しながら、会えない時間はLINEで繋がりながら、共有して深めてゆく。
トークルームでの会話に加え、ひとつのツールとして、
私が書いてみんなに読んでもらっていたのが『断片小説』です。
それは、役者たちが演ったエチュードの断片でもあり、
そのとき発したセリフや言葉も拾い、
あるいはエチュードでは「出来なかったけどやりたかった」芝居であったり、
エチュードを終えてみたら浮かんだことだったり、
私が加えた妄想もあります。
役者たちがやりたいボンヤリしたものに形を与えたりもしました。
共有して、読みながら、涙しながら、愛し合いながら、作ってきました。
『ガチケイドロ』の産物です。
それらを、ぜひお客さまにも読んでもらいたいね、という話になりましたので、
これから、週に一度のペースで、ブログで公開していこうと思います。
週刊連載ですね!
「断片」です。
「物語の切れ端」です。
このワークショップ自体の特長でもあるのですが、
「まとめきらないこと」「決めきらないこと」
これが実はとても大事。
制約なく、個々が自由に発想したものを、共有して深めてゆく。
だから、断片小説は、決して穴なく繋がってはいません。
ズレもある。
ただ、「断片」に見えるキャラクターに、彼らの想いに触れる。
そういうモノです。
どうぞ、フリーダムなCブレンズの「妄想」を、お楽しみください。
役者たちを知っているお客さまは、
ぜひ彼らの演技を思い起こしながら、お楽しみくださいませ!
]]>旧年中は、皆様もまだまだコロナ禍で大変な中、
演劇集団Cブレンドに、さまざまなご支援、あたたかい応援の言葉を賜り、ありがとうございました。
2022年も、私たちは前向きに活動してまいります!
応援よろしくお願いいたします!
主宰 相原千景
]]>私は、やっとこさお節の支度を終え、
まだ片付かぬまましばしコーヒータイム(笑)
さて、2021年、あっという間に過ぎてまいりました。
まだお客様を客席にお迎えする勇気が持てず、
しかしなんとかして動き続けていたいと活動してきたCブレンド。
ときには写真撮影、ボイスドラマ収録、細かいものをちまちまとやり続けていた感じです。
夏にドカンと収録した『鬼サミット』配信公演では、
たくさんの団外の方のご支援、ご協力を賜り、
収録、編集、配信することができました。
また、たくさんのお客様に、慣れない配信チケットご購入、ご視聴いただき、嬉しい感想をたくさんいただきました。
本当に、たくさんの方に支えられて活動できていると、今年も噛み締め、感謝した一年でした。
また、私個人として、少しずつ演劇のお仕事も増え、
順に迫ってくる目の前のやるべきこと追われている間に、一年過ぎていった印象です。
気持ちがまだまだ停滞している状態で、なんとか奮い立たせて取り組んでいました。
来年も、いつの間にか過ぎてしまいそうです(笑)
でも、今年よりもっと、前向きに、明るい気持ちで取り組んでゆけたらな、と思います。
2022年も頑張るCブレンド!
応援よろしくお願いいたします!
]]>新型コロナウイルスの感染状況を考え、
無観客にて映像収録、後日配信公演という形を取ることにいたしました。
役者スタッフの安心安全を最優先に守りながら、皆様のご家庭で『鬼サミット』をお楽しみいただけるよう、頑張ってまいります。
ご支援、どうぞよろしくお願いいたします。
演劇集団Cブレンド
]]>新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する中、我々、演劇集団Cブレンドは、対面での稽古、ミーティング、公演などの全てを自粛し、しばらくオンラインによる活動のみ行うことにいたしました。
団員とその家族を守ることはもちろん、介護職、教職の者が数名おり、万が一の場合、周囲に与える影響が大きいと考えるからです。また、感染者の多い地域に在住、勤務する者は、自分が知らぬ間に無症状の感染者となり、他のメンバーに感染してしまうことに大きな不安を感じております。
つきましては、2月に予定しておりました配信公演『CyanBlue』は、公開見合わせといたします。楽しみにしてくださっていたお客様、申し訳ございません。また、この決断によりご迷惑をおかけする関係各所の皆様には、深くお詫び申し上げます。
対面活動自粛の期間は、受験生の皆様への影響を鑑み、3月末までを予定しておりますが、状況により延長も考えております。その間は、オンラインを活用し、来年度の活動計画、基礎稽古などに励んでまいります。
どうぞ、ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。
演劇集団Cブレンド
]]>感染状況も好転せぬまま、新しい年が始まりました。
年末年始も休まず対策に尽くしてくださっている皆様には、
深い感謝と尊敬の念を表します。
私たち演劇人は、どうしてゆけばいいか、答えの出しきれぬまま考え続ける日々です。
Cブレンドは2021年、
一日も早く元通りの日常の中で、安心して舞台が作れるよう、
自粛すべきところは自粛し、工夫して今だからこそできる表現や稽古に取り組み続けたいと思って活動していきたいと思っています。
そしてそれが、誰かの心を潤すことができたら嬉しいです。
本年も、演劇集団Cブレンドを、よろしくお願いいたします。
主宰 相原千景
]]>皆様思い思いにお過ごしのことと思います。
私も今年は、餅つきも中止、買い出しも宅配で、買い忘れも「もーいっか!!」で済ますテキトーお節を作って、
ダラダラな大晦日を過ごしています。
思い返せば昨年の今頃は、いつも通りの年末を過ごし、
一年後がこんなことになるなんて思いもよらずにおりました。
のほほんとしていたものです。
それが、あれよあれよという間にコロナウイルスが迫りきて、
MIENEXTAGEの中止……
そのときから、もう夏もダメだ、小劇場は数年に渡りダメだ、と思い、
秋の野外公演を目指して動いてまいりました。
野外公演に際し、ご協力くださいました関係各所の皆様、
ご支援をくださいましたたくさんのお客様、
本当にたくさんの方々のお力で私たちは演劇をさせていただいているのだと、改めて感謝することができました。
度重なる公演中止にくじけそうになったり、気持ちが停滞したり、周囲の大切な人の命に危機感がつのったり、大変な年でしたが、
この「感謝」に気づけたことは、私たちにとってとても貴重なことでした。
このブログを読んでくださる皆様にも、改めて御礼申し上げます。
まだまだ、少なくとも2年は、安心して活動できない日々が続くと覚悟しています。
それでも、アナログ人間ばかりのCブレンドですが、
稽古をオンライン化したり、(そのおかげで思いがけず東京、大阪、海外の団員と一緒に稽古できたり!)
中止になった夏公演『鬼サミット』の中止告知をZoomドラマにしたり、
そしてこの第3波の中では、写真と音声を使った作品の配信を目指して!
と、さまざまに活動の仕方を工夫しながら頑張っています!
止まっていません!!
来年も、今まで通りとはまいりませんが、
今だからこその新しいアイデア、新しい表現方法との出合いにワクワクしながら、頑張ってまいりたいと思います。
来年も、演劇集団Cブレンドを、よろしくお願い申し上げます。
]]>改めまして、『乙姫様の憂鬱』公演にご支援・ご協力をいただきありがとうございます。
準備期間は様々な方のお世話になり、公演当日はたくさんの方にお越しいただきました。皆様の暖かいご支援、励ましの言葉がどれほど心強かったか。人を思いやる気持ちを自分も誰かにつなげていきたいと思います。
そんなことを言いつつ、ブログのほうはしょーもないネタでお送りします。
公演にお越しいただいたお客様のご案内役だった、お祭りなどでおなじみの光る棒(Amazonなどではケミカルライトと記載されているので以下ケミカルライト)。
お客様がお帰りの際に記念に、もしくはお子さんが喜んで持ち帰ってくださったので、公園内の通路にあった分はすべて無くなったのですが、役者が控えていた舞台裏においてあった分が余っていました。
ドタバタの撤収のさなか、乙姫が「誰か欲しい人〜」と言っていたのですが誰も受け取らず。
ただ、撤収疲れと公演終了でちょっぴりのもの悲しさを抱えていたせいで、光が消える瞬間がゴミ箱の中なのはかわいそうだと思ってしまった自分は、誰にも言わずそれらを持ち帰る帰り道にしょーもない思い付きをしてしまうのでした。
「湯船に浮かべればきれいじゃないか?」と。
持ち帰ったケミカルライトを水洗いする際に確認すると浮くことがわかったので、ワクワクしながら深夜に風呂の湯張りをし、明かりをつけずにぷかぷかと浮かべていたのがこの写真。
水に浮かんでいることが全く分かりませんね…。まぁ仕方がない。
浮かべ始めたあたりからブログのネタにしようと閃いたので、きれいに整えたのがこちら。
…きれいですよね?
そんなこんなでケミカルライトと戯れたわけなのですが、説明書きによるともうそろそろ発光が終わる時間。
かわいそうだと思って持って帰った以上、消えるときに放置なのはダメだろうと枕元に置いて寝ました。
起きてみると、まだ光っている…。
前言撤回できない自分は、次の予定のために乗った車の助手席にケミカルライトを載せて出発したのでした…。
最終的に、いつの間にか消えたケミカルライトは助手席にあったビニール袋に入ったまま足元に落ち、助手席に人を乗せた時にも気づかずそのまま放置されていたので、彼らにとってそれでよかったのだろうかと悩まずにはいられません。
長ったらしい文章を最後までお読みいただきありがとうございます。
]]>お天気に恵まれ、無事、上演することができました!
一緒に祈ってくださった皆さん、ありがとうございました!
ご予約いただいたお客様は80名を超え、
当日券のお客様もたくさん来て下さり、
なんと104名のお客様にご来場いただきました!!
本当にありがとうございます。
さらに、ご支援金や、物販のご購入で、たくさんのご厚意を頂戴いたしました。
本当に、本当に、ありがとうございます。
朝から現場入り、
一日で仕込みからテクの打ち合わせから上演、撤収まで、全てをやりきらなければならない公演……
それはそれはハードで、ろくにリハーサルも出来ない状態でしたが、役者たち、頑張りました。
お客様のマスクの下から漏れるクスクス笑い、涙ぐんでくださる姿、
Cブレンド一同、ありがたく心に受け止めました。
あらためまして、本当にたくさんの方のご協力で実現できた公演だったと、ありがたさを噛み締めています。
桑名市役所様、とくに、ブランド推進課様、アセット課様には、本当にお世話になりました。
朝早くから発電機を仕込んでくださった加納電気様、
翌日も朝早くに撤去作業ありがとうございました。
公園管理様にも大変よくしていただきました。
そして照明、音響でお世話になったレイ・ステージ桑名様!!
かなりタイトなスケジュールの中、
安心して公演できる音響仕込み、
素敵な照明を作っていただき、ありがとうございました。
この竜宮城は、レイ・ステージさんの照明なしでは実現しませんでした!
団内では、役者、張り付きスタッフだけでなく、
忙しい仕事の合間を縫って、また遠方からも、当日スタッフとして何人も駆けつけてくれました。
みんな生き生きしてましたね!
やっぱり、「演劇の現場」でこそ「生きてる!!」って感じるんです私たちは!!
思うことはたくさんたくさんありますが、
ダラダラ長くなっちゃいますので、また仕切り直しますね。
まずは、たくさんの人に見守られて開催できたことに、
深くて大きな感謝を………!
]]>
Google マップ:野外ステージ
公共交通機関(電車):
近鉄・JR桑名駅より徒歩約20分(1.3Km)
公共交通機関(三重交通バス):
行き:桑名駅前(2番乗り場)より長島温泉行に乗車→(4区間)→田町下車
18:50発 18:54着予定 (下車後徒歩約10分 700m)
帰り:田町より桑名駅前行に乗車→(4区間)→桑名駅前(終点)下車
20:39発 20:47着
20:54発 21:02着
21:24発 21:32着
田町交差点より東へ進み、1つ目の橋(多聞橋)を越えた横断歩道のある十字路を右折(約300m)
左手に堀を見ながら進み、左手にある九華公園の入り口の堀にかかる橋を渡る(約150m)
公園内は、会場までの順路にケミカルライト(光る棒)を設置しております。
自家用車:
●名古屋方面より
・国道1号線 「八間通」交差点を左折(九華公園方面)
・国道23号線「地蔵」交差点を右折(いなべ・桑名市街方面) 県道401号線
「萱町」交差点を右折(九華公園方面) 県道613号線
「田町」交差点を右折(九華公園方面)
●四日市方面より
・国道1号線 「八間通」交差点を右折(九華公園方面)
・国道23号線「地蔵」交差点を左折 県道401号線
「萱町」交差点を右折(九華公園方面) 県道613号線
「田町」交差点を右折(九華公園方面)
会場周辺に無料駐車場はございません。柿安コミュニティパーク駐車場を1回300円でご利用ください。
通常、夜間は閉鎖しておりますが、公演のお客様用駐車場として18時半から借りております。
劇団のスタッフがおりますので、入庫の際に現金にてお支払いください。
近隣にお住まいの方にご迷惑となるため、路上駐車をされないようお願いいたします。
駐車場を出て右に進み、1つ目の橋(舟入橋)を越えた横断歩道のある十字路を左折
左手に堀を見ながら進み、左手にある九華公園の入り口の堀にかかる橋を渡る(約150m)
公園内は、会場までの順路にケミカルライト(光る棒)を設置しております。
駐車場から会場まで徒歩約6分です。
----------
今回の台風や、台風に伴う大雨で被害を受けられた方にお見舞い申し上げます。
三重県内はまとまった雨の影響で土砂災害の危険性が高くなってきており、南部では実際に土砂崩れも発生しています。
安全に過ごせる日々があってこその文化・芸術です。
常に気を配りながら終演まで動いてまいりますので、皆様もどうか身の安全に十分にご注意ください。
]]>
このところ、優秀な広報隊長じゅんちゃんのおかげで、
TwitterやらInstagramやらが充実し、賑わっておりますので、
ブログはいっかな〜?
なんてサボっておったのですが、
なんと、今や遠方組のひぐちから、更新をせっつかれる匂わせメッセージが…(笑)
更新しますブログ!!
まもなく本番ですもの!!
さてさて、野外公演『乙姫様の憂鬱』、
今週末!
日曜日に迫ってまいりました!!
長かったですね〜…
ミエネクに参加するための作品でした。
テーマは「時代」、
キャストは4人、
30分芝居、
ミエネクだから初々しい新人起用でいこう!
…と作ったものを、少〜しだけ長くし…たわけじゃなく長くなっちゃったから切らなきゃいけなかったんですが(笑)
切らずにたっぷり上演して45分って感じです!
新人のやとぅも育ち、
Cブレンド出演3回目のこだま、
ベテランだけど意外とCブレンド出演が少ない佐野、
そして、さんざん主演やってんのにいつまでも新人風味が消えないだーひろ(笑)
プラス子役!!演劇経験どころか人生経験ひと桁(笑)
少人数ながら、なかなか見ごたえのあるCブレンド作品となりましたよ!
どうぞお楽しみに!
さて、この野外上演、
3月末に企画し、遠い道のりでした……
そして、スタッフワーク的には、まだゴールできる気がしていません……
これまでも、劇場でないところでの公演をこなしてきたCブレンドですが、それでも想定外の困難の連続です!
まだ不安ですもん!!
何か大ポカやってんじゃないかって!!
そこへ台風ですよ……。
「雨天?中止ですよ。どうしようもないですもん」
なんてわかったふうに言ってたんですが、覚悟が足りませんでしたね……
いざとなると悪あがきしたくなっちゃうもんです。
予報が怪しくなってきた昨日から今日にかけて、
あらゆるパターンに対応するため、関係各所に協力をお願いして回っておりました。
どこへ行っても、皆さん精一杯のご協力、温かいお言葉をいただき、感謝しきりです。
おかげさまで、自分たちの中で、どういう方向になっても腹落ちできる方向性を見つけることができました。
いや、やりますよ?
やりますよ野外公演!!
台風は通り過ぎます!!
Cブレンズと、一緒に祈って管さった皆様の思いが届き、雨は上がるのです!!
信じて突き進みます!!
今回、本当にたくさんの支援者様の存在を改めて感じ、
Cブレンド一同、感謝感謝です。
桑名市文化協会、
ブランド推進課、
アセットマネジメント課の皆様には、
本当に親身になってお世話をしていただきました。
レイステージ様、
加納電気様には、
大変な環境の中、さまざまにご提案、ご助言をいただき、とても丁寧に仕事を進めていただいています。
劇団すがお様、
劇団員弁川様には、
ありとあらゆる面での親身なご協力、温かい応援をいただき、安心感をいただいています。
稽古場である、くわなまちのえき様、
立教まちづくり拠点施設様には、
応援いただき、またいろいろなご協力や、無理を聞いていただいたりしました。
カフェMago7様には、物販の事前事後販売でご支援いただいています。
お客様には、お会いしたときにはお声かけいただいたり、SNS、メッセージなどで、あたたかいお言葉をいただいています。
「たのしみだよ!」
「行くよ!頑張って!」
「物販買うよ!」
「天気心配だね」
「絶対晴れるよ!」
「皆さん体を大事にね!」
中には、
「見に行けないけど支援がしたい」
と、ご寄付をお送りくださるお客様が何人もいらして、
本当にお客様の存在をありがたく感じています。
皆様のお気持ちを受け取り、Cブレンド一同、
全力で上演いたします!!
]]>皆さま、大変ご無沙汰しております。
新型コロナウイルスの影響で、大打撃な演劇界……
我々Cブレンドも、3月、5月、6月、7月の公演が中止に、
私の勤務先の公演も軒並み中止になり、
稽古も会議も、対面を自粛して、オンラインで行ってまいりました。
でも、私たちは止まっておりませんでしたよ!
この公演に向けて、3月からずっとあれやこれや水面下で動いて来て…、
やっと…やっと実現します!!
演劇集団Cブレンド10月公演
コロナ禍からの復活を賭けた野外公演です!
水面下で動いてまいりまして、舞台は深海です!!
『乙姫様の憂鬱』
脚本・演出 相原千景
10/11(日)
19:30開演
九華公園 野外ステージにて
御伽草子の名作「浦島太郎」の後日譚?!Cブレンドの個性豊かな役者たちが、ゆる〜く感動的に演じます!
チケットご予約受付を開始いたしました。
カルテットオンラインの予約ページ
https://www.quartet-online.net/ticket/c-otohime
感染症予防対策のため、席数は少なめを想定しておりますので、お早めのご予約をお願いいたします!
なお、この公演につきましては、桑名市文化協会様、桑名市ブランド推進課様に、並々ならぬご支援をいただきました。
本当にありがとうございます。
稽古も、まだまだしづらい世の中、
感染症予防を徹底しながら、対面稽古は最小限の日数で取り組んでまいります!
どうぞ、ご支援よろしくお願いいたします!
]]>皆様、すっかりご無沙汰いたしております。
子どもたちとの自粛生活でメンタルやられながら、
オンラインで稽古やミーティングしつつなんとか正気を保ちながら、
少しずつ、仕事も日常に戻りつつあります相原です。
一方で、演劇やってないと狂っちゃう人間なCブレンズは、
無駄に新作スピンオフラジオドラマを書いたり、
オンラインで体作りをしたり、
「おうち演劇」生活でなんとか保ってまいりました。
さて、少しずつ、劇場も再開されてまいりましたが、
やはり小劇場にはとくに、まだまだ不安がいっぱいで、
Cブレンドも、信念持っての自粛継続を決めました。
ポツポツ情報を流してましたので、楽しみにしてくださっていた方もいらっしゃってありがたい限り…
そうです!
0歳から100歳まで楽しめる、あの鬼たちのコメディ『鬼サミット』久々の再演!
の予定でしたが…
2020年6月 小学校公演
2020年7月5日 NTNシティホール
ともに、
コロナウィルス感染症拡大防止対策のため、上演中止、そして、来年度の同時期に延期とさせていただきます。
楽しみにしてくださっていた皆様、申し訳ございません。
私達にとって、一番大切なことは、
お客様からも、団員、その家族からも、感染者を出さないための努力をすることです。
現在、日頃の基礎練、新作ためのミーティング、稽古の全てを、オンラインで行っております。
自粛を続ける覚悟。
でも立ち止まらない勇気。
そして作風を貫く信念。
今後とも、演劇集団Cブレンドに、ご理解、ご支援を、よろしくお願いいたします。
さあ、この公演の中止を決めてから動き出した企画
『鬼サミットZoom!』
『鬼サミット』が延期になっちゃった告知動画!
こんなの録ってました!
グループ通話で稽古し、
それぞれ自宅で「アナログ仮想背景」を作り、
ガチでメイクして録ってますよ!
アナログフル活用ですよ!
サミットが中止になってしまったよ!?
ということで、
人間界で流行ってる(?)らしいZoomで集まってみた鬼たち。
あの鬼たちがオンラインで駄弁るひとときを、ゆる〜くお楽しみください。
https://youtu.be/FEPmX2ur9do
【キャスト】
「桃太郎」の鬼…山田裕之
「一寸法師」の鬼…森本順
「こぶとりじいさん」の鬼…鈴木優希
「大工と鬼六」の鬼(声)…渡辺直樹
長老…相原千景
Zoomホスト鬼…清水麻衣
【特別出演】
アマビエちゃま(アリスとチロル)
https://www.instagram.com/hanamoto_takako/
煩ちゃん
【スタッフ】
脚本演出…相原千景
Zoom監修…内田祥平
Zoom監修補…清水麻衣
#演劇集団Cブレンド
#鬼サミット
#鬼サミットZoom
#無編集
#鬼
#鬼メイク
#役者
#自宅
#アナログ仮想背景
#鬼たちの日常をリアルに再現
#日常密着ファンタジー
#日常覗き見系演劇
#ふと隣に座りに来るような劇団
今後、Cブレンドとしましては、
夏を越えてのコロナの状態を見極め、
秋公演を目指して動いてまいります。
今後とも、演劇集団Cブレンドを、どうぞよろしくお願いいたします。
]]>MIE NEXTAGEのホームページやTwitter、我々CブレンドのTwitterなどでもお知らせいたしましたが、
新型コロナウイルスの拡大の状況から、
5/5,6に上演を予定していたMIENEXTAGE2020の中止を決定しました。
上演を楽しみにしていただいていた皆様、延期をご理解ご支援いただいた皆様には深くお詫び申し上げます。
膨大な時間と労力をかけてきたものが、開催できなくなることは、本当に辛い。
しかし、私たちの大切な催事が、お客様、私たちの大切な仲間や家族の身を脅かすものになってはならない。
どんなに対策をしても、演劇を提供する空間には、感染のリスクが残ってしまう。
涙を飲んで、でも前向きな決断です。
しかし、こんな世の中でどうやって芝居をやれるんだ。
なんて、我々は悲観しません。
この作品は、いつか必ず、皆様にお届けします。
あたためます。大切に大切に。
そして、仕切り直します!
それでもいつ終息するのか検討もつかない。
仕切り直しても、まだダメかもしれません。
そのときもCブレンドは、社会の安全と健康を第一に考えて決断し、何度でも仕切り直します!
そして、
この危機の終息のため、対策を万全にして、工夫して、乗りきりながら、少しずつ前にも進みます。
必ず、お客様に、この作品をお届けするために。
その日まで、待っていてくださいますか?
今後とも、演劇集団Cブレンドに、
あたたかいご支援を賜りますよう、お願い申し上げます!
]]>某大御所演劇人が、公演中止や劇場閉鎖に対して物申した件について。
確かに、一公演中止にすることにより、個々の収入や劇団運営における死活問題があることはわかる。
中止にしていい公演などあるはずもない。
しかし、どんな舞台も、そのために途方もない時間を費やして、汗と涙を流して、胃を痛めて、眠れぬ夜を重ねて、作られていて、
それを、涙を飲んで上演中止にした人たちは、お客様を守るために涙を飲んでいる。
私は、公演が中止になることより、自分の関わった公演のお客様から、新たな感染者が出てしまうことのほうが悲しい。
私も、作り手でありながら一観客。
お客側としても、わかっているつもりだ。
今、公演中止にするのは、一日も早くこの事態を収束させ、一つでも多くの公演が、安全安心な状況のもと上演できるようにするためなのではないのか。
どこかの誰かの公演が、一つでも多く上演できるようにするため、涙を飲むのだ。
こんなことで、演劇は死なない。死んでたまるか。
観客がいてこそ作品が完成……そんなこと百も承知だ。
それでもせめて無観客上演をして映像を残す団体がある。
それが先々いくつもの公演に支障をきたそうとも、みんなで力を合わせて公演延期に向けて動く団体がある。
形を変えて足掻く人がいる。
学校の休校措置、テーマパークの閉鎖…etc.、
それにより、たくさんの人が仕事を無くして困っている。
授業が無くなって収入が無くなった非常勤講師がいる。
いくつものレッスンが休講になり収入が無くなった講師が、インストラクターがいる。
子どものために仕事を休まざるをえなくなって困っている人がたくさんいる。
逆に、子育て世帯を支援するため残業が増えて帰れない人がいる。
卒園、卒業する子たちのためにともに過ごす時間を一生懸命計画してきたのに実現できなかった先生たちがいる。
イベントのために子育ての合間を縫って夜も眠らず作品を作っていたのに出す場が無くなったハンドメイド作家もいる。
皆が人混みを避けるなか、不特定多数の入り乱れる人混みで、食料品や日用品を売ってくれる店の人がいる。
介助しないと食事がちゃんと食べられず痩せ細ってしまう親のところに、家族が名古屋に通勤しているという理由で行けなくなって気を揉んでいる人がいる。
その介護施設では休校措置のため出勤できる職員が不足。
利用者減少が懸念される飲食店や観光業界。
医療現場の混乱は言うまでもなく………。
演劇人も頑張ろう。
……頑張るけれど、確かに支援はほしいです行政の方々。
]]>「劇団花さつき」さん、15周年おめでとうございます!
記念公演「弌剱平天下の夢」観劇してきました。
地元神戸(かんべ)城主、織田信長の三男、織田信孝の数奇な運命を描いた時代物。
高校演劇の審査員でご一緒した近藤先生の脚本演出です。
残る史料の少ない歴史を物語にするのは、とても難しい。
真摯に取り組もうとすればするほど、迷いは膨らむ。
その中で、歴史に向き合い、誠実に物語を紡がれたのであろうことが感じられました。
衣装も、中世の着こなしを表現しようと、製作、着付けがされていて、勉強になりました。
私たちも、今回、「乙姫様の憂鬱」は中世です。
とはいえ我々はファンタジーですので、かなり遊びますが、やっぱりフワっと中世が薫りたいので、頑張らなければ!と思わされました。
個人的に、脚本の、言葉の選び方や台詞の連ね方が心地よく感じられ、また、主人公であるはずの織田信孝が一度も姿を見せず、彼を取り巻く人々に「語られる」という構成も好きでした。
信孝が亡くなり、その地のひとつの時代が終わったときに、「そなたはこれからどうする?」と聞かれた旅芸人の女が答えた台詞、「どうもしません。ただ生きていくだけです」というのは刺さりました。
現代人が忘れている、人間の本質だと思いました。
様々な立場や身分の人々が、それぞれに発する台詞が、絶妙に絡み合って展開される台本……
役者さんたちには、深い解釈と、精密にテンポを組み上げることが求められられる。
難しい挑戦であったのでしょう。
今、とくに若い人たちの間では、
前衛的であったり、斬新であったり、奇抜であったり、
そういう表現がもてはやされる傾向にあって、
確かに、新しい表現は面白いし、そういう演劇の発展も大事だし、それこそが若者文化であると思うのだけれど、
彼らが「古くさい」と一蹴する「芝居」という文化が失われてしまうことは、ぜったい避けなければならないと、強く思う。(←私は最近、若い人の発言に腹を立てています)
こういう「芝居」に、誠実に、真摯に向き合い、取り組む劇団の存在は貴重だ。
花さつきの皆様のご尽力、心から尊敬します。
お疲れ様でした!
MIE NEXTAGEの折り込みもご協力いただき、ありがとうございました。
Cブレンドは、斬新でも前衛的でもなく、ダサくてくだらなくて、ベッタベタに展開されてゆくコメディでもって、
全力で!お客様の肩の力を抜きにかかります!(笑)
どうぞ、フワ〜っと笑いたい方、MIENEXTAGEにご来場お待ちしております!
]]>劇団カラーズさんの「ロミオとジュリエット」に、
Cブレンドから早川、イナヅカ、うちの息子、
客演させていただき、ありがとうございました。
桑名から来てくださったお客様もあり、本当にありがとうございます。
Cブレンズもたくさん、応援に駆けつけましたよ!
私も今回は、チビの息子の付き添いという形で、
何度か稽古場に参加させていただき、
改めて、古典作品をそのまま上演することの価値と、
そのプロセスに求められるストイックさに魅了されました。
改めて古典作品を考えるきっかけをいただきました。
シェイクスピアの作品は、
世界観や言葉の美しさ、ストーリーの面白さが魅力であることはもちろんですが、
原文(ではなく翻訳ですが)を、演じるために解釈するうちに、
シェイクスピアが、遠い世界の偉人ではなく、同じ人間なのだと実感できます。
描かれている人物たちは、それぞれ別々の個人であるのだと。
たとえば、ロミオとジュリエット は、愛の物語だとされがちだけれど、
私は、「ジュリエットの自我の目覚め」の物語だと、改めて思いました。
それが、愛を媒体に語られるのだと。
私が今回、一番感情移入して観たのが、ジュリエットが、パリスとの結婚を待ってほしいと両親に懇願するシーンでした。
(ゴリゴリが、いい感じで、恐ろしげな父親を演じていました!)
13歳の「子ども」だったジュリエットは、
はじめは自分の結婚話が持ち上がってもまるで現実味を感じない。
それがロミオと出会って恋に暴走するうちに、自分の人生に能動的に関わろうとしてゆく。
しかし、親の付属物である生き方から脱却する方法を、自分一人でそれをしようとしたとき、死ぬという選択肢しか持てない若さであったという悲劇なのです。
カラーズのジュリエットさんからは、その意志の上に、死まで暴走するひたむきさを感じました。
カラーズさんの次回、8月公演は、現代劇。
そして来年の2月は、我々Cブレンドも全面協力!客演としてたくさん参加し、古典の世界に参戦させていただきます!
私も、一役者として参加できることが楽しみです!
演目は『夏の夜の夢』
私がNHK児童劇団で中2のときにやった大好きな演目です!
そのときは脚色されていたので、シェイクスピア様には初めて挑戦するわけで、戦々恐々としております(笑)
]]>劇団カラーズ「ロミオとジュリエット」
2月8日(土) 14:00〜/18:30〜
Cブレンドから、
早川、稲塚、そして、
Cブレンズではないですが息子が、
客演させていただいております。
早川は、ジュリエットの父。
稲塚は、ロミオの母……母!?……母です(笑)
息子は、ロミオとトンチンカンなやりとりをする、字の読めない召し使いです。
先日、初通しを見せていただいて、ふと思い当たったことがありましたので、
つらつらと、だいぶ長〜く語らせていただきますね♪
【通し稽古から考察する、ロミジュリの本質】
私はロミジュリを、戯曲として読んだことはありますが、ちゃんと演ったことがありません。ちゃんと見たこともありません。脚色されたものや、バレエは見たことありますが、シェイクスピア先生のお書きになった台詞を、それを日本の文学者が訳したものを、忠実にやっているのを見たのは、このカラーズさんの通しが初めてでした。そして、おや?と思いました。私の今まで思っていたロミジュリと、シェイクスピア先生のお書きになったものの本質とは、違うのではなかろうか?と。
字面で読んでいると……しかも読んだのは高校生のときだったからよけいにだけども……ロミオとジュリエットの甘やかな恋の語らいや、若者たちが悲しくも剣を交えてしまう出来事、哀しい恋人たちの死のシーンなどを、ピックアップしてしまっていたのだが、よくよく読んでみたらば、両家の大人たちはさほどいがみあってはいなかった。古い争いの上に縛られてはいながら、理性で、なんとかお互いあたらずさわらずといった様子。神父は、この恋が両家の争いを終わらせてくれたら、と言っているし、乳母だって応援しまくっている。なのに、この恋がうまくいかないばかりか、若者たちがあんなにたくさん死なねばならなかったのは、若さというピュアな愚かさゆえ。それぞれが、もう少しずつ冷静であったら、彼らは死なずに
、幸せになれただろう。
そう、そうするとやはり、子どもたちが死なねばならなくなる前に、大人たちが現状を放置せず、一歩でも前に進んでいれば…というところに行き着くのかな。
そういうことを、気付かせてくれたのは、カラーズさんの、暴走小娘と、恋に恋するヘタレ男子。ん?もしかして?というきっかけをくれたのは、ティボルトを殺してしまったあと、神父の庵で、ジュリエットのいない世界なんて地獄だ!殺してくれ!とのたうち回るロミオだった。
原文ままをやる。それはとてもストイック。
我々は今、役者が空気を作りやすい台詞を、選んで書きすぎている。しかし、時代も文化も芝居の在り方も違うところで書かれた台詞には、リアリティが見いだせない。同じ人間のドラマであるはずなのに。なぜ、この意味なさげな言葉がここにあるのか。解釈して、意味付けて、演じる。最高にストイックだ。そういう活動を続けておられるカラーズさんを尊敬する。
来年、Cブレンドもガッツリ参加し、合同公演をさせていただく。すでに扱う作品は決まって、私も自分の台詞にコンニチハした。
さてさて、どう向き合おうか。武者震い(笑)
なんて言ってますが、私、3月上演のMIE NEXTAGE参加作品『乙姫様の憂鬱』、全霊をもって役者たちを愛し、全力で当て書きしております(笑)
が、やはり解釈はして演じて欲しいので、役者たち!頑張ってね!
いやいや、語りすぎました!
語りすぎました。が!
カラーズのロミジュリ!
早川の、貫禄あるジュリエットの父、
稲塚の、艶やかなロミオの母、
息子の、すっとぼけた召し使いを、
見に来てやってください!
]]>難しかった。正直難しかった。
難しかったので、もう一度観に行きましたが、それでも難しかった。それが個人的には刺さりましたね…。
わかってないなりにも感想はあるので、書く気力があれば来週書こうと思いますが、多分途中で投げ出すと思います。だって難しいんですもの。
ちなみに『雲には遺書を』。だーひろが出ています。
演劇してないと生きながらにして死んでいるだーひろが出ています。
だーひろが持ってきたチラシを見て「自分の好みに合いそうだなぁ」と感じたので行ってみたのですが、自分の直感も案外当てになることを確認できました。(チラシだっけ? LINEだっけ?)
さて、ここから反省。
・アンケート用紙によくわからないことを書いてしまった。2回とも。
(冷静になると恥ずかしい)
・2回目を観る前に主宰の方のツイッターを読んでおけばよかった。情報が補填できたのに…。
(初回は、先入観無く観るのも楽しみ方としては間違ってはいなかったはず…)
・2回目、ほとんどだーひろを観てなかった。ごめんだーひろ。今度言い訳させて。
制作陣もしっかりしてて、精進の心を持たなければならないと何度目になるかわからない反省をして、終わりたいと思います。
だーひろ、あと3ステージガンバ!
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